幻想のゲームの中で〜インナーチャイルドWSにて

私はいつも残念に思うことがあります。

それは、とても魅力的な人が、自分を疑ったり、嫌ったりして自信を失っている時。

才能に溢れ、絵を描けばイキイキすることができるのに、愚痴をこぼしては泣きっ面を仮面にしてしまった人。

自分の力量を試すことなく、ネット裏でキャッチボールをして過ごす人。

そんな人達に触れあうたび、「ああ、この人はまったく自分のことを知らないのだなあ…」と、そう感じてため息が出てしまうのです。

表現アートセラピー画像2私は、表現アートセラピーを初めてから、幸いにも沢山の人と出会う機会に恵まれました。
その中でも特に<インナーチャイルド・ワーク>に参加してくれた人達のことは印象に残っています。
皆、例外なく個性に溢れ、エネルギーの源の存在感を漂わせている人達。
彼らは、いわば歩くインナーチャイルド達なのです。

でも、皆自分が傷ついた子供だという意識はありません。
だって、社会の中で生き延びるためには、頑張って大人にならなければいけなかったのですから。
そのうち、その頑張りや、我慢が染みこんだ仮面を着けて、次第にそれが自分の本当の顔なのだと思い込むようになってしまったのです。
次第に、皆自分の光を見失い、自分を偽り、自分の殻に閉じこもるようになってしまいました。
そんな生きづらさの中で、なんとかその暗闇から脱出するために、決心して踏み出した一歩が<インナーチャイルド・ワーク>だったりします。

表現アートセラピー画像3ワークショップには魔物が棲んでいる…。

そう私は常々感じていましたが、今回ほど痛感したコースはありませんでした。

大リーガー、イチロー選手の「自分が全く予想しない球が来たときにどう対応するか。それが大事です。試合では打ちたい球は来ない。好きな球を待っていたのでは終わってしまいます。」という言葉に出会ったとき、なるほど、、と思ったものです。

ワークは私にとって試合のようなものなのです。
イチロー選手が明言するように、いつも望む結果が得られるわけではありません。まして、参加者がこちらの期待通り、大きな気づきや、解放をつかめるとは限らないのです。

ワークが始まってから、終わるまで、安心する時などありません。
それは、私にしても参加者にしても同じ土俵の上にいるような気分なのだと思います。
この機会に、自分と繋がるか、和解できるか、一歩を踏み出せるか。大げさかもしれませんが、一つの大勝負なのだと思うのです。

表現アートセラピー画像5皆、見失った自分を取り戻すための並々ならない意欲を持ってこの5日間のワークに参加して来ました。そして、知らぬ間に創ってしまった偽りの仮面を捨てて、本当の自分を見つけるために、一つ一つのワークをこなして行くのでした。

時には、私が彼らにボールを投げ、在る時は、彼らが私にボールを投げかけました。

自分が自分の限界(仮面)を超え、それをブレークスルーするためには、やはり限界ギリギリまで自分を追い込む必要があるのです。

もちろん、その限界とは人それぞれ、レベルや時期が違います。
ある人は、自分が傷ついていたことをただ認めるために。
あるひとは、偽りの自分に決別を言い渡すために。

表現アートセラピー画像6そのためには、やはり<頑張り>が必要です。

セラピーの世界では、頑張ることをあまり奨励しません。
なぜなら、多くの人達が、自分を責め頑張り過ぎたことで、疲れ果ててしまい、心を病んでしまった、という理解からなのだと思います。

もし、自分に抵抗し、闘うことを続けて、生きることに疲れ果ててしまった人は、十分な休養が必要でしょう。
そして、休養の後に、回復への欲求が生まれたとしたら、次に出来ることは、解放へ向かって前進することです。その課程にもしもこのインナーチャイルドワークがあるのだとしたら、それは大いなる飛躍の時を迎えたという印でしょう。

そんな大勝負の時に、頑張ることは、大切な意味を持っているのです。
恐れから逃げるために頑張るのではなく、希望に向けて進む時に頑張る必要があります。
 表現アートセラピー画像7内なる子供は、自分のそんな頑張りを期待しているのです。
自分を闇から呼び寄せ、光の世界に連れ出す勇気ある大人の自分を欲しているのです。
これまで、自分自身を絶望の闇の中に閉じ込めていたのは、誰でもない自分だったと気づくことがエッジなのだと感じる人もいるでしょう。

想像してみてください。自分がどれほど素晴らしい存在なのか。
それを否定し、隠し、偽っていることの愚かさについて。

私は、そんな人達の仮面から垣間見える光を知らせることが、唯一の役目だと感じることが多いのです。

 表現アートセラピー画像8 自分に何ができるか?と問い、答えられるのはそんな役割にすぎません。
それでも、それを素直に信じてもらえることのほうが少ないので、いろんな玉を投げる練習を余儀なくされます。
そんな中、今年も私の予想を裏切るような逆転ホームランをかっ飛ばしてくれたみなさん。本当に素敵なチャレンジを見せてくれてありがとう。

私はいつでも、このエキサイティングなゲームに魅せらつづけているのです。