映画のタイトルにある「LOSERS」とは、「おちこぼれ」という意味を指します。
負け犬という意味もあるネガティブな言葉なんですが、映画に登場するアーティスト達は、この言葉を勲章のように掲げていました。
1990年代。サブカルチャーの波が時代を飾り、パンク、ヒップホップ、グラフィティの真っ直中で若者たちは自由な生き方を謳歌していました。
アートのメインストリームからは落ちこぼれた若者達は、表現することを手探りに続け、自分たちの存在を社会に訴えつづけました。
そんなパワーが次第に社会を意識をわしづかみにして、メディアの表舞台にまで上り詰めるプロセスを追ったドキュメンタリーフィルムのタイトルの名が「BEAUTIFUL LOSERS」です。
ニューヨークのイーストビレッジの街頭や吹きだまりの倉庫の中で、彼らの表現活動は息づいていました。
ビルの壁に落書きされたメッセージから始まり、次第に自分達の作品を作り、展示するギャラリーを手作りするところまでその勢いは止まるところを知らず、遂にメジャーなアートとしてブレークしていく、ある種のサクセスストーリーのような展開。
映画の中で、彼らが語る言葉が印象に残りました。
「自分を表現するのは、自分しかいない」
「プロのアーティストなんて居ない、表現する奴はすべてアーティストなんだ」
ちょっと、感動しました。
このキャッチフレーズを見て、映画を見る気になったぐらいです。
私自身も、ちょうど1989年に同じニューヨークのイーストビレッジに棲み、絵を描こうとウロウロしていたこともあり、映画の中の見慣れた風景に意識がタイムスリップしてしまいました。
絵を描くことに挫折していたその頃は、死にたくなるぐらい落ち込んでいた思い出しかなく、画面に移るニューヨークの街角の空気を感じて、切なくなりました。
私はあのとき、まさにLOSERS「落ちこぼれ」の気分だったのだと思います。
でも、彼らは、そんな時代にずっと自分を諦めず、表現を続けたのだなあ、、という感慨の気持ちも沸きました。
そして、最後に誇りをもって、アウトサイダーとしてのプライドを勝ち得たことに対して拍手を送りたいと思いました。
私も表現アートと出会い、改めて自分を表現する場を持てたと思います。
そんな時に、昔の自分を思い出すきっかけをくれたこの映画に出会えたことに感謝です。
ドキュメンタリー映画が好きな人にはお勧めですが、ヒップホップやグラフィティーアートがメインなので、好きな人も嫌いな人、偏りがあるかもしれません。
後半は東京も舞台に登場します。ワクワクするアートシーンを体験したい人、表現アートのスピリットを感じたい人は映画館へぜひ。
※たぶんDVDにはならないのでは?
東京では、10月3日(金)まで「渋谷ライズX」にて。
「BEAUTIFUL LOSERS」公式ホームページ
映画「ビューティフル・ルーザーズ」の公式ブックです。展覧会の模様などもご覧いただけます。