ふーちゃん(麻野文恵さん)が、アートセラピーと出会ったのは今から7年も前のことです。
まだ高校生だった彼女は、年よりも目つきは遙かに大人びていながら、その出で立ちはまるで子供のような不思議な女の子でした。
初めて表現アートのワークの中で、その子供のような彼女が向き合っている世界は、生きるか死ぬか?という鬼気迫ったエッジの先でした。
私は、ひさしぶりに本物のアーティストのエッセンスを持った人間に出会ったような新鮮でいて、驚くような気持ちを味わいました。
それでも、あまりに彼女が幼かったので、どのような花がさく種なのかも解らないまま、種をやわらかな土に蒔きその成長を見守ることにしました。
それから7年もの間、足繁くアートセラピーをやりに来ては、その時ごとの心の内を吐き出すように絵を描きました。
早熟だった彼女は、早くからアカデミズムな美術教育を嫌い、たった一人で表現する意味を自分自身とは誰か?を探り続けていたのです。
ここ数年、アートセラピーのワークの中で描いた作品が、いくつかの画廊の目にとまり、個展を開くようになりました。
当時から、その表現の奥の深さには、底知れない不思議な力や光がありました。
私はそんな彼女の作品の中に、いつも暗闇の中で何かを探り、そして出口を探しているような感覚を感じていました。
それは時に本当に苦しそうで、果たしてアートセラピーが助けになっているのだろうか?と、心配になったほどです。
しかし、苦しい中も、彼女はずっとワークに通い、絵を描きつづけ自分を探し続けました。
年若い彼女にとって、もっと華やかで、興味を引くものなどいくらでもあったのでしょうが、折に触れ絵を描きに来たのでした。
そして、今年の春彼女の個展が開かれました。
「FIND ME!!」というタイトルを見て、私はあの感覚を思い出しました。
ふーちゃんがずっと探していたものは、彼女自身であり、自分自身の子宮の出口。
自分が自分を生み出すこと。
自分自身を自分の中に見出し、自分が自分の出口を探していたその接点が見つかった瞬間。それが、今回 そこで出会った絵の中に映し出されていました。
彼女の作品は100%生粋の自身のエッセンスで構成されていました。
本当に見事に・・。
最近は、アートを見るときそのグレードなど考えないで味わうようになったのですが、今回目の当たりにした彼女の作品に、あらためてそのクオリティーの高さと、純粋な表現に出会ったような感動を覚えました。
それは、絵単体のクオリティーというよりも、その絵が生み出されたプロセスのリアリティーなのだと思うのです。
「はじめて、自分をアーティストと呼んで良いと思った。」
彼女のそのつぶやきに、とても自然に納得できたのです。
この作品を生み出すことで、本当に新しい命が生まれ、外の世界と繋がることができたのだし、サナギが蝶になるように、新しい自分を創造したのでしょう。
作品はアートセラピーのワークショップで描かれたものなどを中心に、写真家とのコラボレーションしたミクストメディアの手法で制作されたものが紹介されています。
和紙の人間国宝の職人の手による紙にプリントされた作品は、またオリジナルとは異なる威厳を保ってしっかりと空間を飾っていました。
春を迎えたこの季節にふさわしい新しい才能の誕生の瞬間です。
ぜひ、オリジナル作品に触れてみてはいかがでしょう。
※麻野文恵さんの展覧会は3月31日まで麻布十番の[Infocurious]にて開催されております。
港区麻布十番3-6-9ーB1
Tell:03-5439ー9337
HP:http://www.infocurious.com/