ワークショップに参加してくださる皆さんが「アトリエで過ごした時間は、まるで夢のようだった…」という感想を寄せてくれる。
アトリエの在りかが、海を見渡せたり、森に囲まれ山を見渡せたりするところにあるからかもしれないが、何よりもワークショップを非日常と感じるのは、普段触れない心の深層に触れたからなのかもしれない。
そして、その幻想のようなドラマを行き来するプログラムに思考をゆだね、ただ黙々と絵を描き、感情をわかち合うことは、さも夢のような経験と呼んでいいのだろう。
でも、私はいつも思う。
それは夢じゃないよ…。
みんながワークの中で体験している「心を見つめる時間」こそがリアルな世界なんだ。
ワークを終え「帰りたくない~」と皆つぶやきながら電車に乗ったとたん、誰もがスマホを取り出し仮想空間に没入!
誰かがアップしたSNSの投稿や、明日からの予定をチェックするのに余念がない。
なんだ、案外楽しそうじゃないの(笑)
でも、それってリアルなのかな?
多くの人々が信じている。
自分の住む現実世界はたいくつ。厳しい。辛い。
頭が痛いことばかり…。
静寂は敵だ。
何もしていないと、頭がうるさくがなり立てるから、お酒やゲームで紛らわしたりする。
在るがまま起こってる感覚や感情は、いつしか深層のどこかに押しやられ、姿を見せなくなってしまう。
目の前のご飯を食べながら、何を食べているのか感心を向けない。画面やおしゃべりのほうが刺激があるからなのかもしれない。
いま、ここで対面している人の話よりも、ここにいない人のことや情報が気になる。
特に差し迫った問題がない人は、生きる意味や価値などに悩みの矛先を向ける。
※そんな種類の悩みは、答えがないから無限に悩む事ができる。
なんてね…、ほぼ昔の私のことですけど。(笑)
さて、リアルを体験したいのなら、そろそろ夢から醒めたらどうだろう?
この現実世界そのものが夢だって。でも、それを理解するのは難しい。
そもそも、思考(顕在意識)には現実を幻想だということが理解できない。だから体験したことを理解しようとしても無理だ。
体験はただ、感じたまま、在るがままでしかない。
思考は、「”体験すること”はどうやら役立つことらしい」ということは理解できても、「体験そのもの」を理解することは出来ない。
だから、思考は「体験したこと」を後付けで良かったように意味づけ、自分を納得させてしまう。
しかし、それももったいない話だ。
体験は、ただ「体験するため」だけにある。
それが役立つかどうか、わからなくても、座ってただ考えているだけよりも価値がある。
…と、たぶん魂は思っているはずだ。
では、何でも好き勝手に行動することが体験なのか?というと、これも疑問。それでは、刹那的な生き方となってしまう。
ある本で、アドラーの残した次の言葉を読んだ時も、なにやら違和感があったのを覚えている。
「人生とは連続する刹那である」
確かに、辞書を引けば、「刹那」とは、瞬間のことであり、時間の最小単位とあるけれど、「刹那」には、「無機質な時間」というイメージがつきまとう。
一方、「いま、ここ」とは、体験を在るがまま味わい愛でる「無限の意識の世界」の広がりを表している。
もちろん、アドラーは「Setuna」なんて言葉は知らないはずだから翻訳の問題なんだけれど、どうせ訳すなら、「人生とは、いまここの連続である」と訳されていたら良かったのに…と、思った。
確かにね、最近の「いまここ」ブームは、言葉だけが先行してしまっているのだけど。
私はみなさんのスピリットにこう呼びかけたい。
体験することは、生きるということ。だから、存分に体験してほしい。
特に、ワークショップに来て下さるみなさんに、ポジティブやネガティブ、あらゆる感情や感覚を感じてほしいと思う。
良い感覚ならいいけれど、嫌な感覚は放置したくないので意味づけて片付けたくなる。でも、それは「気づいたふり」であって、「体験」にはならない。
実際に…
体験をすぐに言葉にすることなど不可能だ。
無理繰りしたところで、思考は感情に追いついてはいけない。
時間が経って、ふとした瞬間に気づいたりするものだ。辛い体験や、嫌だと思っていた体験が、後から沢山の気づきをくれることは誰もが承知だろう。
感情を在るがまま認め味わうのは、実はとても勇気がいる。痛いし、怖ろしいし、イラつくし、切ないし、恥ずかしいし、居たたまれなくなる…。
でも、それこそが「いま、ここ」に踏ん張っていることになるのだから、少しだけ辛抱することだ。
今、ここで起こってることから目を背けずに。
(そこに気づきの鍵がわんさかある!)
それは、まるで変わりゆく夕方の雲の色を見ているかのようで美しい。
体験すること、在るがままでいることに慣れてくると、だんだんとエネルギーが高まってくる。
理屈ではなく、ハートが開き、心が柔軟になってくる。
すべて、在るがままだったんだ…と気づく時。
それが 今を生きるということなのです。
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