あなたは、これまで恋い焦がれているもの(時計やアクセサリー、はたまた持ち家に至るあらゆるもの)を、手にしたことがあるだろう。
飽きっぽい人なら、手にした瞬間から興味を失うことすらある。不謹慎かもしれないけれど、人間関係もこれに似ている。遠巻きに見ていて、憧れている人でもつきあってみると期待ハズレだった…という話をよく聞く。
恋愛に至ると、これが顕著に表れる。
誰もが自分にない魅力を持っている人に惹かれ、好きになるが、これはシャドウの一つの現象なのだ。
シャドウの話は前に何度も書いたが、出会いたくない招かざる客の反対バージョンをゴールデンシャドウ(黄金のシャドウ)という。
暗黒のシャドウとは異なり、黄金のシャドウを映し出す相手は、恋愛の対象になりやすい。強いて云えば、殆どの恋愛はシャドウと向き合っているようなものだ。
ゴールデンシャドウとは、自分が追い求めてきた愛やパワーのエネルギーを投影する存在である。
本来は、皆自分の中にもともと具わっているエネルギーなのだが、それが信じられないので他者から与えてもらおうと躍起になっているだけのだ。
そんなある日、理想の人が現れる。
自分が望むものをその人はもっている。
それだけでときめいて繋がりたいと思うのは、これはもう潜在的な欲求だ。
そして、幸か不幸か、恋に落ちるのである。
もちろん、幸運なのだが、それに気づくのには試練がつきまとう。 だから恋は舞い上がる気分なのに、「落ちる」と表現されるのかもしれない…。
恋人の蜜月を過ぎると、やがてお互いの黄金の光に陰りが見えてくる。 まるでスポットライトから蛍光灯に変化するかのように、チラチラ現実が見え隠れしはじめるとここからが本番。いよいよ暗黒のシャドウの登場である。
恋の舞台は暗転し、暗夜~受難期が訪れる…。
前向きにこれを乗り越えれば、強い絆ができるのだが、妥協すれば共依存という面倒な関係が生まれることもある。
恋愛関係でなくとも、殆どの親密な人間関係にこのプロセスが当てはまるのだが、誰もが心当たりがあるのではないだろうか?
最近、夫婦やパートナーシップのトラブルの相談を受けることが多い。 そのほとんどが大恋愛の後に結婚したり、一緒になったカップルである。
仲むつまじい時は良いのだが、トラブルとなると悲惨だ。 とにかく相手への攻撃が容赦ない。(お互いというよりも、妻からの不満が多いのだが…)
女性からの訴えはこうだ。
相手の態度が変わった…。
(あなたの態度はどう変わったのかは、聞けない(^_^;)
相手の考えがクルクル変わるというけど、それは当たり前。そもそも、思いが変わらない人なんているだろうか? 相手の変化には敏感だけど、自分の変化については、どうも鈍感になってしまう傾向がある。
自分のことを客観的に観られない人ほど、人を批判しがちだ。シャドウとは、自分が否定している要素を統合させるために現れているのに、それを否定してしまったら、もう何がなんだか解らなくなってしまう。
すると人生が混乱しているような気分になり、自分は何も悪くないのに、酷い扱いを受けている犠牲者になってしまう。 悪いのはいつも他者や世界のほうなのだ。
そんな人に、シャドウの話をしても、たいてい、
「ああ、彼は(彼女は)私にシャドウを投影しているのですね。だからあんな酷いことをするんだ!」と解釈して終わってしまう。
または、相手を自分のシャドウなのだと認識するところまでは行けても、そのシャドウから逃げようとして関係をあきらめるか終わらせてしまう。
なんともったいないことだろう。
そんなソウルメイトみたいなパートナーと出会ってるのに…。
私は思うのだけど、シャドウともっと親密になればいいのに…と。彼らは、とても愛深い存在なのだよ。
わざわざ汚れ役を引き受けて、自分を完全にしてくれようとやってきた白馬の王子、または眠れる森の美女たちなのだから。
シャドウに抗い逃げたとしても、どのみちどこかで出会うことになる。それが今世か来世かは解らないけれど。
なぜなら、私たちは自分の全体性を見るためにこの世にやってきた存在なのだから…。
つまり、シャドウワークとはいかに自分の全体性について気づくための人間ゲームである。
そのゲームをはじめたのなら、ゴールするまでやめることはないだろう。
シャドウが自分の一部なのだという信憑性に気づくのは、シャドウワークを体験した時だろう。
誰もが、嫌々ながらも自分の避けてした相手を受け入れると、不思議に関係が好転する。
離婚の危機にあったカップルがまたラブラブになる。(めでたしなのか、第2ラウンドのはじまりなのか…?)
本当の自分と出会うために、本当の人生を全うするために出来る事は、自分のシャドウに恋することだ。
シャドウを愛せるようになれば、
あなたは、もう恋愛の達人であるのと同時に、
悟った行者よりも幸せだといえる。
関連記事
禁断の果実~人間関係の秘密(前編)「ひとを嗤うことなかれ」
かすかな胸騒ぎや、ときめき。もやもや、わくわく、むらむら(笑) 最近私はそんな感覚や勘を「フィラメント」と呼ぶようになっ